東海村の素粒子実験施設での放射能漏れ(1)

私も放射線加速器施設で放射線管理をやっていましたので、コメントしてみたいと思います。
これは、放射線に関して国内最高の英知を擁する高エネルギー加速器研究機構日本原子力研究開発機構放射線管理部門が管理する施設での事故です。放射線というものを、人間の能力で管理できうるか、という疑問も含めて極めて、深刻な事態と受け止めざるを得ません。
1)文科省放射線施設承認の考え方
施設側から出された許可申請書(国の研究機関の申請は承認申請となり、今回は承認申請に当たる)では、放射線施設や加速装置が正常な状態で働かされた場合に、作業に当たる従業員(放射線業務従事者)、施設外の一般住民や環境に、法令で定めた規制値を超えないことの証明が要求されます。そのための能力を有した施設の構造が要求されます。事故が起こった時の対応については記述の必要はないのです。今回の素粒子施設は金のターゲット(加速粒子をぶつける標的)に高速の粒子をぶつけて、未知の素粒子を発見して、その性質を調べる施設です。その際に、当然多量の放射性物質は生成されますが、それらは金ターゲットの中に密封されていて空気中に出てこない、従って放射能漏れは起こらない、と言う条件で申請が許可されているのでしょう。だから室内の空気を換気扇で屋外に排出する構造の建物でも許可が取れていたのです。空気中に放射能が漏出する事を想定していたら、高性能のフィルターを通して空気を浄化して屋外に排出する排気施設の設置と、その能力の証明が必要になります。
金ターゲットを化学処理して中から放射性物質を取り出そうと考えると、さらに厳しく、空気中放射能濃度、水中放射能濃度、等々、が法令で定めた基準を超えないように管理する施設の能力が要求されますが、化学処理をしない場合には金ターゲットから出てくる放射線の量を算定して、作業者の外部被曝線量を規制値以下に証明するだけで良いのです。申請時から、内部被曝を想定した施設ではないのです。
事故が起こったらどうなるのか??。大変な心配ですが、申請には書く必要がないのです。
役人側の言い分は、
「申請諸どうりに実行していれば、事故は起こりえない」
のです。
事故が起こったら??。
「約束通りに実行しない、お前達が悪い」
のです。
「その時には厳しく罰してやるぞ」
なのです。
文科省の私たち役人は全く積はないのだ」
と言う論法です。
しかし、法律は、ある程度予想される事故について、はその対策まで想定した申請を要求すべきです。人間はいつミスを犯すかもしれないのです。人間は自分の欲望を通すために規則を犯すこともあるのです。
厚いターゲットに高速の加速粒子を照射すると、私の常識では(厚い鉄板にレーザーを当てて鉄板を切断するように)いとも簡単に溶かすことが出来ます。
私の推測では、ターゲットが溶けないようなごく微量の加速粒子(ビーム)を照射する条件で申請が許可されていたのでしょう。
金ターゲットが溶けない条件についても、おそらく申請書で説明されていたと思います。
ところが、今回は装置の誤作動でその400倍ものビームが照射されてしまった、と言うのです。大変疑問です。
装置が誤作動を起こす装置とは何ですか?。誤作動が起きるような装置は許可してはいけないのです、誤作動すれば停止する{動かない}安全対策が必要なのです。私には、放射線には全く無知無関心な著名な理論物理家さんが暴走したのではないかと思いますが・・・。
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