東海村の素粒子実験施設での放射能漏れ(4)

4.加速器施設の安全基準
普通の加速エネルギーの低いX線発生装置は加速粒子の流れ(ビーム)を止めると放射線が全く発生しなくなるのですが、加速粒子のエネルギーを上げていくと、核反応が起こって放射性核種が生成されるようになります。この場合は、ビームを止めてもターゲット付近からは放射線が放出されて危険な状態が続きます。
法令の加速器の分類も、放射性物質が製造されない加速器(危険度が低い加速器)と、放射性物質が生成される能力のある加速器(危険度が高い加速器)に分類すべき所ですが、実際は、放射性物質を取り出さない施設と放射性物質を(例えば化学処理するとかで)取り出す施設(危険度が高い施設)とに分けてしまいました。
素粒子実験施設の加速器放射性物質を製造する能力はあるのに、放射性物質を取りだして使用することはないので、普通のX線発生装置と同じ基準を満たせば、文科省の承認がおりる事になります。
でも、金ターゲットの中には凄く沢山の種類の放射性核種が生成されるのです。
原子炉の中にはウランの1/2の重さの核分裂生成核種が大部分ですが、素粒子施設の金ターゲットの中には、金の原子核核分裂した放射性核種は勿論、金原子がバラバラに壊されて出来た軽い放射性核種から重いものまで(破砕反応生成核種)まで凄い種類の放射性核種が生成されているのです。原子炉の中の放射性核種の比ではないのです{註}。それらが一旦事故が起こると実験室内に拡散するわけです。これが普通のX線施設と同等の建屋の構造で良いわけがないのです。普通のX線施設は換気扇で外と繋がっていても良いのでしょうが、素粒子施設では金ターゲットが加熱溶解されることを当然のこととして想定し、室内の空気は空気浄化装置を経て、排気口での放射能濃度を監視しながら排出するように設計されてしかるべきです。さらに、非密封放射性核種を取り扱う施設の基準を全て備えているべきです。
素粒子実験施設は、放射線障害防止法のザルの目を巧みにくぐり抜けた違法施設と言ってもいいのではないでしょうか。これが国の作った施設なのです。


{註}放射性核種の種類は、原子炉に比べて素粒子施設の方がかなり多いですが、トータルの放射能は、原子炉に比べて微々たるものです。
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