ブナの発芽(まとめその2)

3. 本からの知識
私の本棚に、ブナの本があったのを思い出して読んでみた。Neuton,special issue第4号、22頁。ブナの生態に詳しい本だが、ブナの二段攻撃についてそれらしい記載はなかった。さらに、図書館に行って調べたが、それらしい記載はなく、ただ“ブナの種子は乾燥に弱く、寿命が短いので、採り播きにすべし”が印象に残った記載であった。ブナの種子はそんなか弱いのか、そんな性質で極相林を形成できるのか?、と疑問が湧いた。まだ残っていた種子を②、③、④と時間をずらして屋外に撒いた。それまで、種子は机の中に放置されていたが、室温約20度、湿度はおそらく50%以下で、高山性のブナにとっては、最悪の種子保存条件であったろう。しかし②の種子は3月下旬には一斉に発芽した。発芽率も悪くはない。③は4月の上旬に最初の種子が発芽を始めたが、5月の初めになっても発芽が続いている。発芽率は悪い。④は4月の下旬にようやく1本が発芽したが、5月6日現在ようやく10本が発芽した。(このうち3本はスズメに茎をちぎられてしまった)
⑤は、3稜型のブナの種子殻の1稜をピンセットで剥ぎ取り、発芽をしやすくしたつもりの種子だったが、発芽は皆無であった。その原因は、第1には種子が細菌に侵されて死んでしまったのかもしれないこと、第2にはスズメに掘り返されてたべられてしまったことである。いずれにせよ私のおせっかいが原因であることは明らかだ。⑥は本による情報から全く発芽しないと思っていたが、5月に入ると発芽してきた。発芽率は③や④より高そうだった。
以上からいえることは、ブナの種子は採り播きが一番いいが、急激に発芽率が低下することはない。しかし、悪い条件で貯蔵しておくと、発芽の時期が遅く、不揃いになり、発芽率もかなり悪くなるようだ。机の中に放置されたブナの種子がこのような結果だったことを考えるに、自然界の種子は(本に書かれているように寿命が短くはなく)春先まで十分生きながらえていると私は思う。
4. 賢いスズメ達
この冬は庭にエサ台を置いて、野鳥のためにインコのえさを与えていた。餌場には30羽ぐらいのスズメが集まっていた。そこから10mもない場所にブナの種を播いていたのだが、スズメ達の遊び場にもなっていた。
 スズメ達は、固い殻に覆われたブナの種子を壊すことはできないので、ブナの種子に何の興味も示さなかった。
私は、ブナの根が種子から出かかっているか腐ってしまったかを確かめるのに、時々種子を1つ掘り起こしては、殻の1稜を剥がして、胚の様子を観察していた。終わったのを付近に捨てていたのがいけなかったようだ。これをスズメは目ざとく見つけてえさにした。⑤の種子からは胚のにおいがしていたのであろうか、ある時から、播いた種子のほとんどが掘り返されて食べられてしまった。
それまでは、②〜④の種子は地中から掘り起こされることはなかったが、ある時期以後、芽生えして殻が地面に現れると、殻をつまみ上げて食べられるかを吟味する狼藉を始めた。私が種子の殻の一部をはぎ取って放置したのが、スズメ達が狼藉を始める原因となったのであろうが・・・、けしからん奴らだ。
“覚えていろよ、スズメ達よ!!、来年は餌場を作ってやらないからな”

“ 賢いスズメに脱帽 ”です

⑥の種子は、スズメ達の気が付かない場所なのであろうか、狼藉には遭っていない。