フシグロセンノウは栽培が難しい

昨年の9月でした。道脇の法面で草刈りが行われていて、刈られたばかりの雑草の中にフシグロセンノウの花を見つけました。可哀そうにと、家に持ち帰って花瓶に挿したのです。
花穂の中に、咲き終えた緑の螬果もあったので、日当たりのいい縁側に移して、水を交換するたびに茎を少しづつ切り詰めて1か月たちました。茎は5cmぐらいまで切り詰められましたが、螬果が黄色くなったので螬果を切り開いてみました。中からは芥子粒みたいな種子が沢山出てきました。発芽能力があるかは疑問でしたが、封筒に保存しておきました。
この春、鉢に撒いたところ、沢山の芽が出てきました。庭の4か所に移植したのですが、それからが大変でした。
1週間ぐらいして気が付いてみると、半分ぐらいの株が根元から食べられてしまったのです。付近をピンセットでかき回してみると、蒼黒いネキリムシが出てきましたので、退治しました。
それから2週間もするとフシグロセンノウは15cmぐらいに成長しましたが、この植物は自力で立つことができないようで、根本付近で折れ曲がり、先端だけ頭を持ち上げるようになりました。折れ曲がったところに傷口が出来るのでしょうか、今度はダンゴムシが傷口から食べて枯らしてしまう被害です。フシグロセンノウは雑草が生い茂る環境中で、他の植物に寄りかかりながら成長する<満員電車の中で乗客がお互いに寄りかかりながら立っている>こんな植物なのでしょうか。庭では寄りかかる植物がないので、添え木をしてビニールのひもで結わえてやることにしました。ダンゴムシの被害は、ダンゴムシ用殺虫(?)剤を巻いたところ、灰色の球(死んだダンゴムシ)がごろごろ転がっていました。かなり効果がありました。
これで安堵したところが、そうは問屋が卸しませんでした。今度はハキリバチによって葉が丸く切り取られたり、ショウリョウバッタやカタツムリに食べられて樹勢が悪くなりました。
次は、茎の先端を切り落としてしまう狼藉者です。茎に卵を産みその先端を切り落としてしまう小型のカミキリムシがいますが、(観てはいませんが)その類の虫でしょうか。
花芽を付ける時期にこれには大変困ります。暫くするとわき目が成長しだしたして、その頂点に花芽が成長始めましたが、花芽のほとんどが枯れてしまったのです。よく見ると小さな穴が開いていて、ここから虫が出たようです。花芽を内側から食べる虫もいるようです。仕方がないので、市販の殺虫剤スプレイをかけてみました。これが功を奏したのでしょうか?、3株だけ花を咲かせましたが、普通の花に比べると一回り小さい花でした。

これで一安心かと思えば、今度は、花びらやつぼみを外側から食べてしまう青虫も現れました。結局、数個の花しか咲きませんでした。
こんなに虫に好まれるフシグロセンノウがよく自然界で生き残れるものだとびっくりですね。
その秘密を私なりに考えてみました。自然界ではフシグロセンノウは群落を作らず、こちらに1株、あちらに一株と、点在して、他の雑草の中で見え隠れしながら生きています。群落を作ると昆虫たちに見つかって全滅させられる恐れがありますが、点々と分布していると、たまたま見つからない株が子孫を作られるからでしょうか。点々とした場所に子孫を残すために、風にも乗る芥子粒のような種子になったのでしょう。


そう言えば、昔は高原や道の法面によくフシグロセンノウの橙色の花を見たものですが、最近は見かけないなと思い出しました。そこで、昨日、近くの高原を女房と歩いてみましたが、一株も見られませんでした。帰ってきてレッドデーターブック(10年ぐらい前の古い版ですが)を開いてみましたが、フシグロセンノウは載っていませんでした。
我が家の庭でフシグロセンノウが生育できる環境は何処かを考えてみました。候補は、生垣の中、サツキの株の中です。そこに移植して来年に期待です。

昨日の高原の散策ですが、収穫がなかったわけではありません。サルナシの実がたわわに実っていたので収穫してきました。さっそく女房が果樹酒に加工しました。この冬の楽しみです。