コゴメウツギ

「おとうさん、フクジュソウが出てくるところに生えているこの雑草、抜いていいの?」
「ちょっと待ってくれ、それはコゴメウツギなんだ、そのままにしておいて」
これは、女房と8月初旬頃の会話であった。
コゴメウツギは、昔は、ススキを編んだ炭俵の、上と底をふさぐ蓋としてよく用いられていた。しかし今では全く使い道のない低灌木である。それがなぜ我が家の庭で芽を出したのか?。種子がどう運ばれてきたのか、気になった。


とりあえず鉢に移して、暫く観察することにした。こんな、草だか木だか分からない貧相(?)な植物を鉢植えするのは私ぐらいではなかろうか、と、思いつつ・・・。
タネはどのような手段で繁殖域を広げるのだろうか?、私の想像は風で舞い散る粉末状のネジバナの種子みたいなものではないかと思ったのだが、種子図鑑によれば、直径が2ミリぐらいの堅果らしい。
これでは、風に乗って遠くに運ばれることはない。こんなものがなぜ我が家の庭に?、謎はますます深まった。
先日、女房と山を散策した時には、頭の隅にはコゴメウツギがあって、コゴメウツギを探してしまっていた。
コゴメウツギの木はあれども、種子を付けた木はなかなか発見できなかった。ようやく見つけた木から2㎜程度の螬果を採取した。



乾燥を待って、拡大鏡を覗きながら、ピンセットで種子25個を取り出した。種子は一つの螬果から1つ、まれに2個出てきた。種子図鑑では長さが2.1±0.1mmと記載されていたが、出てきたのは1.3㎜ぐらいの種子で、図鑑とはだいぶ大きさが違うようだ。
鉢植えのコゴメウツギの根元にばら撒いてみた。ここなら忘れないであろう。
来年の春に芽が出てくれるといいのだが。



書きながらふと気が付いたのだが、フクジュソウは夏の暑さに弱いので、今年は、葉が萎れてから、表土を腐葉土で養生した。もしかすると、この中にコゴメウツギの種子が紛れ込んでいたのかもしれない。林の中の低木の種子、環境条件が良くなるまで、何年か林の中でじっと待っている、そういう能力のある種子かもしれない。